■総論
Class | 隻 | 排水量/水中速度 | 主要装備 | 配置 |
Whiskey級 | 0〜4 | 1,333t/13.6kt | 533mm魚雷発射管×6 | 西海、訓練用 |
Romeo級 | 22〜26 | 1,712t/13kt | 533mm魚雷発射管×6 | 4隻西海、18隻東海? |
(Golf I/II)級? | ? | 保有可否不確実 | ||
(Foxtrot)級? | 保有可否不確実 | |||
(新型1,000t)級? | 0+ | 存在可否不確実 | ||
(41m)級? |
1? | 存在可否不確実 | ||
サンオ級 | 17〜22 | 330t/8kt | 533mm魚雷発射管×4 | (基本型のみ魚雷装着) |
Yugo級 | 40〜55+ | 90t/8kt | 主として工作部所要 |
北朝鮮海軍がいつから潜水艦を保有したのかは確実ではない。恐らく、1960年代に旧ソ連から導入したウィスキー級が北朝鮮海軍初の潜水艦だったようである。ウィスキー級導入と前後して、1960年代初盤、工作員浸透用潜水艇建造作業を始めたが、その作業が継続され、今日のいわゆるYugo級潜水艇
に命脈が引き継がれているようである。1970年代初めから中国からRomeo級潜水艦を直導入し、1970年代中盤からは、Romeo級を自主建造している。Romeo級は、1980年代以降現在まで北朝鮮海軍の実質的主力潜水艦となっている。1990年代中葉以降、北朝鮮が新たにサンオ級潜水艦を保有したことが公開されたが、その開発過程は明らかではないが、概ね80年代末〜90年代初めから実戦配置されたようである。サンオ級潜水艦も、Yugo級潜水艇と
同様に正規海軍用というよりは、工作員浸透を主目的として建造しされたようである。一方、北朝鮮が1990年代中葉、キロ級(Kilo)636型導入のため、ロシアと教義を行っている説がマスコミに報道されたことがあるが、それ以後、関連報道がそれ以上ないことを見れば、事実ではないようである。しかし、北朝鮮が実際にキロ級を1隻導入したという説(*)も、
依然流れている。
現在、北朝鮮の主力潜水艦であるRomeo級で、韓国海軍のチャンボゴ級潜水艦と正面対決することは、考えるのが難しい。韓国より長い潜水艦運用経験を下地に常識を超越する戦術的妙を最大限動員しない以上、Romeo級でチャンボゴ級と対決することは、事実上不可能である。むしろ、北朝鮮海軍としては、東海に潜水艦を展開し、米海軍の作戦に間接的負担を与え、大韓海峡に対する機雷封鎖に潜水艦を利用するのが、現実的な代案となるだろう。
■Whiskey級潜水艦0〜4隻(Project 613、Project 631?、W級)
![]() | 満載排水量:水上1,045t、水中1,333t(以下諸元は、Combat Fleet基準) |
![]() | 大きさ:75.94m(全長)×6.31m(全幅)×5.00(喫水) |
![]() | 機関:Type 37Dディーゼル・エンジン(各2,000bhp)×2、2軸、+電気モーター |
![]() | 最大速度:水中13.6kt、水上18.44kt |
![]() | 航続距離:8,580海里(水上9kt基準)、13.8海里(水中13.6kt基準) |
![]() | 作戦可能日数:60日 |
![]() | 潜水深度:150m(ジェーン年鑑基準) |
![]() | 武装:533mm魚雷発射管×6(船首4、船尾2)、魚雷12発又は機雷20発 |
![]() | 電子装備:Tamir-5L能動ソナー、MG-10 Feniks手動ソナー、航海及び水上レーダー |
![]() | 乗務員:軍官9名、下戦士52名 |
![]() | 原生産国:旧ソ連 |
Whiskey級は、ソ連において1950年から1958年の間に建造した潜水艦である。旧ソ連において215隻が建造され、中国でも1956年から1964年の間にソ連製部品を使用して20余隻が建造されたことがある。Romeo級とは異なり、北朝鮮で自主建造することはなかった。一般的に、二次大戦当時のドイツの潜水艦(特にType
XXI)の設計を多く模倣した潜水艦として知られている。
Whiskey級の基本型には、I、II、III、IV、V型等、5種のモデルがあるが、60年代以降、ソ連において実験用として各種改造を行ったモデルもある。北朝鮮が現在保有しているのは、V型(
一切の艦砲がない。)と見られる。
北朝鮮は、1960年代に初めてソ連から4隻を導入した。その後、1974年に再び旧ソ連から交替用に4隻を導入し、東海艦隊で運用した。現在は、全て退役したか、あるいは西海岸で訓練用に使用しているようである。
ジェーン年鑑によれば、北朝鮮のWhiskey級は、今日、西海岸の琵琶串において潜望鏡深度程度の潜航のみ許容される訓練用艦艇として使用されているようだと説明している。『Guide to Combat Fleets of the World』も、現在、4隻全て西海岸に配置されており、
ほとんど寿命が尽きたと評している。しかし、米海軍は、1999年6月まで、Whiskey級は、現役で活動中だと確言している。北朝鮮の武器管理スタイル上、いくら旧式潜水艦だとしても、
そう簡単には廃棄しないだろう。しかし、現時点において、実戦で運用するには、不適合というのが確実である。
事実、北朝鮮の外にWhiskey級潜水艦を運用していた唯一の国であるアルバニアすらも、訓練用にだけ使用した(アルバニアのW級潜水艦も、1995年に完全退役したという資料もある。)。
参考として、Whiskey級の航続距離は、次の通りである(1 Nuatical Mile = 1.85318 km)。水中最大速度(13.6kt)で航海するとき、航続距離は、
わずか25.57kmに過ぎない。どうすることもできないディーゼル潜水艦の限界だといえる。
基準(ノット kt) | 18.44kt/水上 | 9.96kt/水上 | 5kt/シュノーケル | 13.6kt/水中 |
航続距離(海里) | 2,865 | 8,580 | 6,000 | 13.8 |
航続距離(Km) | 5,309.36km | 15,900.28km | 11,119.08km | 25.57km |
■Romeo級潜水艦(Project 033、R級、Type 031級)22〜26隻
![]() | 満載排水量:水上1,390t、水中1,712t(以下諸元は、Combat Fleet基準) |
![]() | 大きさ:76.6m(全長)×6.70m(全幅)×4.95m(喫水) |
![]() | 機関:Type 1Z38ディーゼル・エンジン(各2,400bhp)×2、2軸、+電気モーター |
![]() | 最大速度:水中13kt、水上15.2kt |
![]() | 航続距離:14,000海里(水上9kt基準)、350海里(水中9kt基準) |
![]() | 作戦可能日数:60日 |
![]() | 武装:533mm魚雷発射管×6(船首4、船尾2)、魚雷14発又は機雷28発 |
![]() | 電子装備:Tamir-5L能動ソナー、MG-10 Feniks手動ソナー、航海及び水上レーダー |
![]() | 乗務員:軍官8名、下戦士43名 |
![]() | 原生産国:旧ソ連(中国及び北朝鮮でも自主建造) |
ジェーン年鑑によれば、北朝鮮は、1973年に2隻、1974年に2隻、1975年に3隻等、計7隻のRomeo級(中国Type 031級)を中国から導入したという。また、北朝鮮は、1976年から北朝鮮東海岸の新浦と新浦近海の馬養島造船所において、14ヶ月又は2年毎に1隻ずつ自主建造し、東海艦隊に配置した。現在残った22隻基準として、4隻は中国製で、18隻は北朝鮮で建造したものである。北朝鮮海軍のRomeo級は、
細部的な面で各改良が行われ、ソ連原型及び中国のRomeo級とも、多くの差異があるという。
西側情報当局では、1980年代初盤までRomeo級は西海で、Whiskey級は東海で活動するものと推測したこともあった。その後、東海岸において北朝鮮がRomeoを自主建造したものと確認され、Romeo級も東海岸で活動していると知られるようになった。1985年2月20日、東海で1隻が沈没したことがある。
Romeo級の現在の保有数量は、最大26隻と推定する資料もあるが、普通22隻程度と見ている。『World Navies Today』は、1997年3月公開されたVer 1.0以来、2000年7月公開されたVer 1.04まで一貫してRomeo級の数量を24〜26隻と推定している。
Romeo級は、現在4隻(中国製)が西海艦隊に所属するものと知られており、残り18隻(北朝鮮製)は、東海艦隊に所属しているものと知られている。1993年又は1995年以降、追加建造はないものと推定する見解もある。『Jane's Fighting Ship 96-97』
は、1995年を起点としてRomeo級の新規建造がないものと推定し、恐らく、北朝鮮海軍がサンオ級をより好んだようだと評したことがある。とにかく、運用年限と見ると、Romeo級も
少しずつ退役が行われる外ない状態である。
上の写真は、東海岸で航海中の北朝鮮東海艦隊所属Romeo級潜水艦(艦番15)である。下の写真は、中国海軍のRomeo級である。
■Golf I/II級、Foxtrot潜水艦?隻
1993年、北朝鮮は、ロシアから中古Golf級とFoxtrot級を含んだディーゼル潜水艦40隻を鋼鉄用に購入する契約を締結した。契約の具体的な内容は、資料によって差異が多いが、総隻数が40隻という点と40隻中に最小12隻以上のFoxtrot級が含まれている点は明らかなようである。
いくら鋼鉄用に輸入する中古潜水艦だとしても、北朝鮮が既存に保有していたRomeo級よりは更に良い性能を持った新型潜水艦という点は明らかだった。当然、米国と韓国、日本がロシアに外交的影響力を行使し、その購入契約を取り消させた。『Guide to Combat Fleets
of the World』によれば、購入契約を取り消す前に最小限1〜2隻の潜水艦が北朝鮮に既に移転されたものと推定している。一部マスコミでは、最小限3隻以上が既に北朝鮮に
引き渡したと報道したこともあった。
ロシアの高位当局者は、主要装備を撤去した状態で北朝鮮に潜水艦を譲渡したことから、これら中古潜水艦を北朝鮮が軍事目的に利用する可能性が全くないと主張した。しかし、当時直接貿易を仲介した貿易商社の関係者は、ロシアが原型そのままの潜水艦を北朝鮮に移転したと主張しているため、ロシア高位当局者の主張をそのまま信頼するのは難しい。90年代以降のロシアの
紊乱した社会実情を勘案すれば、ロシア太平洋艦隊側におてモスクワの指示をそのまま履行しなかった可能性もあるためである。
最小限北朝鮮が中古潜水艦の一部部品を潜水艦を建造、改良するのに使用した可能性は無視できないようである。確実ではないが、一部中古潜水艦の鋼材がサンオ級を建造するのに使用されたという主張もある。
■(新型1,000t)潜水艦
1996年の東海サンオ級潜水艦浸透事件当時逮捕された北朝鮮偵察局要員이광수の陳述により初めて確認された潜水艦である。
李グァンスの陳述によれば、新浦の「ボンデ・ボイラー工場」という偽装名称を持った造船所で1,000t級の新型潜水艦を建造しているということである。
『Guide to Combat Fleets of the World』は、1,000t級程度の浸透用潜水艦だとすれば、50名の乗務員の外に30名程度の特殊部隊要員を追加で搭乗させることができるものと推定している。ただ、
李グァンスが語った新型1,000t級潜水艦という新型潜水艦を意味するのではなく、Romeo級(水上満載排水量1,319t)の新規建造を意味するのかも知れないと評価している。
■(41m)潜水艦
『Guide to Combat Fleets of the World』でのみ確認される潜水艦である。大きさが概ね41m程度という事実だけが知られており、その他の具体的な
諸元は、確認されていない。1970年代末に初めて存在が知られたが、その後、追加建造がないものと見られ、設計上の欠陥があるものと推定されている。41m程度ならば、満載排水量が概ね500〜700t内外の潜水艦と考えられる。
最終更新日:2003/05/25